勉強は手で書いたほうが覚えられる、という話をよく耳にします。では、キーボードやスマホで答えを打つのは、覚えるのに向いていないのでしょうか。この記事では、「自分で答えを出す」「打って答える」「手書きと比べる」の 3 つに分けて、研究からわかっていることと、まだわかっていないことを整理します。
選ぶより、自分で答えを作る
まず、答え方の形式についてです。選択肢から正しいものを選ぶより、自分で答えを作るほうが記憶に残りやすいことは、古くから知られています。答えを自分で生み出したほうが、ただ読んだときより覚えている、という現象は「生成効果」と呼ばれています(Slamecka & Graf, 1978; Bertsch ほか, 2007)。
思い出す練習(テスト効果)の研究をまとめた Rowland(2014)のメタ分析でも、練習のテストが記述式(自分で答えを書く形式)のとき、選択式より大きな効果が出ていました。
ただし、選択式がまったく役に立たないわけではありません。まぎらわしい選択肢をうまく作れば、選択式でも思い出す練習に近い効果が出るという研究もあります(Little ほか, 2012)。また、短い答えを書く練習は直接問われたことを覚えるのに向き、自由に書き出す練習はそれ以外のことも覚えるのに向いていた、という報告もあります(Endres ほか, 2020)。形式によって、身につくものが少しずつちがうと考えておくとよさそうです。
頭の中で思い出すより、打って答える
次に、思い出した答えを外に出すかどうかです。思い出す練習には、頭の中で答えを思い浮かべるだけのやり方と、実際に書いたり打ったりして答えるやり方があります。
Rivers らの 2025 年の研究では、答えをタイプするなど実際に外に出して答えたほうが、頭の中で思い出すだけよりもよく残りました。その差は、短い用語よりも、定義のように思い出すのが大変な内容で大きくなっていました(Rivers ほか, 2025)。
頭の中で「なんとなくわかった」で済ませると、あいまいなまま次に進んでしまいがちです。打って答えると、正しく思い出せたかどうかがはっきりします。それも、打って答えるやり方の良いところだと思います。
手書きとタイピング、どちらがいいのか
ここは、言えることと言えないことを分けておきます。
言えること
思い出して答える場面で、手書きのほうがタイピングより覚えられる、というはっきりした証拠は見つかっていません。Richardson と Lacroix(2023)は、手書き・タイピング・絵を描くことを比べました。絵を描くと覚えやすいという結果は再現されましたが、手書きがタイピングより思い出しやすくするという証拠は、全体として得られませんでした。
「ノートは手で取ったほうがよい」とした有名な研究の追試でも、手書きが有利という結果は再現されませんでした(Morehead ほか, 2019)。
言えないこと
一方で、タイピングのほうが手書きより覚えられる、とも言えません。研究からわかるのは「手書きのほうが良いという証拠はない」というところまでです。
また、手書きのほうが脳の働きの面で有利だとする研究もあります(Ose Askvik ほか, 2020; Umejima ほか, 2021)。ただ、これらはノートを取ることや書いて学ぶことを調べたもので、答えを思い出して打つ練習を比べたものではありません。ノートを取る方法と、思い出して答える方法とでは、調べている場面がちがうことに注意が必要です。
まとめると、思い出す練習をするなら、手書きでもタイピングでも、自分が続けやすいほうを選んでかまわない、と考えるのが今の研究に沿った見方です。
打って答えるときのコツ
タイピングで思い出す練習をするときは、次のことを意識してみてください。
- 答えを見てから打たない。答えを見て写すのは、思い出す練習ではなく読み直しに近くなります(Barcroft, 2007; Karpicke & Zaromb, 2010)
- まず何も見ずに打ってみる。出てこなくても、思い出そうとすることに意味があります
- 打ち終わったら、すぐに正しい答えと見くらべる。ちがっていたところを確かめます
- 間違えたら、正しい答えを自分でもう一度打つ。見て写すのではなく、一度画面から目を離してから打ち直します
- 定義や説明のような長い答えも、短い言葉でいいので打ってみる。大変な内容ほど、打って答える効果が大きいという結果があります(Rivers ほか, 2025)
声に出して答えるのも一つの方法です。声に出すことにも覚えやすくする効果はありますが、その大きさは小さいとされています(Fawcett, 2013)。
研究の効果は平均の話で、どの形式が合うかは人や内容によって変わります。いろいろ試して、続けやすいやり方を見つけてください。
梅工房の STUDY TYPE は、受験・資格・英会話・雑学の問題に、答えをタイピング(スマホではフリック)して答える学習アプリです。選択肢ではなく、自分で答えを打つ練習をしたいときに使ってみてください(紹介ページ)。
参考文献
- Barcroft, J.(2007)Effects of Opportunities for Word Retrieval During Second Language Vocabulary Learning. Language Learning. https://doi.org/10.1111/j.1467-9922.2007.00398.x
- Bertsch, S., Pesta, B. J., Wiscott, R., & McDaniel, M. A.(2007)The generation effect: A meta-analytic review. Memory & Cognition. https://doi.org/10.3758/bf03193441
- Endres, T., Kranzdorf, L., Schneider, V., & Renkl, A.(2020)It matters how to recall – task differences in retrieval practice. Instructional Science. https://doi.org/10.1007/s11251-020-09526-1
- Fawcett, J. M.(2013)The production effect benefits performance in between-subject designs: A meta-analysis. Acta Psychologica. https://doi.org/10.1016/j.actpsy.2012.10.001
- Karpicke, J. D., & Zaromb, F. M.(2010)Retrieval mode distinguishes the testing effect from the generation effect. Journal of Memory and Language. https://doi.org/10.1016/j.jml.2009.11.010
- Little, J. L., Bjork, E. L., Bjork, R. A., & Angello, G.(2012)Multiple-Choice Tests Exonerated, at Least of Some Charges. Psychological Science. https://doi.org/10.1177/0956797612443370
- Morehead, K., Dunlosky, J., & Rawson, K. A.(2019)How Much Mightier Is the Pen than the Keyboard for Note-Taking? A Replication and Extension of Mueller and Oppenheimer (2014). Educational Psychology Review. https://doi.org/10.1007/s10648-019-09468-2
- Ose Askvik, E., van der Weel, F. R., & van der Meer, A. L. H.(2020)The Importance of Cursive Handwriting Over Typewriting for Learning in the Classroom: A High-Density EEG Study of 12-Year-Old Children and Young Adults. Frontiers in Psychology. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2020.01810
- Richardson, L., & Lacroix, G.(2023)Which modality results in superior recall for students: Handwriting, typing, or drawing? Journal of Writing Research. https://doi.org/10.17239/jowr-2024.15.03.04
- Rivers, M. L., Northern, P. E., & Tauber, S. K.(2025)Does Retrieval Demand Moderate the Effectiveness of Covert Retrieval Practice? Comparing Covert and Overt Retrieval Practice for Learning Key Terms and Definitions. Educational Psychology Review. https://doi.org/10.1007/s10648-025-10040-4
- Rowland, C. A.(2014)The effect of testing versus restudy on retention: A meta-analytic review of the testing effect. Psychological Bulletin. https://doi.org/10.1037/a0037559
- Slamecka, N. J., & Graf, P.(1978)The generation effect: Delineation of a phenomenon. Journal of Experimental Psychology: Human Learning and Memory. https://doi.org/10.1037/0278-7393.4.6.592
- Umejima, K., Ibaraki, T., Yamazaki, T., & Sakai, K. L.(2021)Paper Notebooks vs. Mobile Devices: Brain Activation Differences During Memory Retrieval. Frontiers in Behavioral Neuroscience. https://doi.org/10.3389/fnbeh.2021.634158