試験の前に、教科書やノートを何度も読み返したことはありませんか。読み返すと内容がすらすら頭に入ってくるので、覚えた気持ちになります。ところが記憶の研究では、読み直すよりも「何も見ずに思い出そうとする」ほうが、あとまで長く覚えていられることがくり返し確かめられています。これをテスト効果、または検索練習と呼びます。

読み直しと思い出す練習のちがい

読み直しは、答えが目の前にある状態で情報を受け取る作業です。見ればわかるので、頭はあまり働きません。思い出す練習は、答えが見えない状態で、自分の頭から引っぱり出す作業です。うまく出てこないこともあり、少し苦しく感じます。

心理学者の Roediger と Karpicke は、読み直しをくり返す学び方と、思い出す練習をする学び方を比べました。その結果、時間をおいてからテストすると、思い出す練習をしたほうがよく覚えていました(Roediger & Karpicke, 2006)。

その後、たくさんの研究をまとめて分析した「メタ分析」でも、同じ傾向が確かめられています。Rowland(2014)は、読み直しと比べたテスト効果の研究を集めて分析し、思い出すのに努力がいるほど効果が出やすいことを支持する結果を報告しました。教室でのクイズを対象にしたメタ分析では、効果の大きさは統計の目安で中くらい(g = 0.50)でした(Yang ほか, 2021)。

勉強法を幅広く比べた総合評価でも、「効果が高い」とされたのは練習テストと分散学習(間をあけた復習)の 2 つだけでした(Dunlosky ほか, 2013)。思い出す練習は、数ある勉強法の中でも、とくに根拠のしっかりした方法だと言えます。

一度できたら終わり、ではない

Karpicke と Roediger は 2008 年に、もう一歩ふみこんだ実験をしています。この研究で目立ったのは、一度正しく思い出せた単語をテストから外してしまうと、1 週間後の成績が大きく下がったことです。一方、読み直しのほうから外しても、影響は小さいものでした(Karpicke & Roediger, 2008)。

つまり、効いていたのは「読むこと」より「思い出すこと」のほうでした。一度できた問題でも、思い出す練習はしばらく続けたほうがいい、ということになります。

思い出せなくても無駄にはならない

思い出す練習を始めると、最初はなかなか出てこなくて、つらく感じるかもしれません。でも、思い出そうとすること自体に意味があります。思い出す試みが学習を助け、その場で成功したかどうかはそれほど関係しなかった、という研究があります(Kornell, Klein & Rawson, 2015)。手がかりが少ない状態で思い出したほうが、あとで思い出しやすいという結果もあります(Carpenter & DeLosh, 2006)。

すぐに答えを見たくなっても、少しだけ粘ってみてください。出てこなかったら答えを確かめればいいので、そこで失敗したと思う必要はありません。

今日からできるやり方

特別な道具はいりません。いつもの勉強に、次のような手順を足してみてください。

  1. 教科書やノートを一度読んだら、閉じる
  2. 白い紙に、いま読んだことを思い出せるだけ書き出す(キーワード、図、流れなど)
  3. ノートを開いて、抜けていたところや間違えたところを確かめる
  4. 抜けていたところだけ、もう一度閉じて思い出す

ほかにも、次のような方法があります。

  • 単語帳やカードは、表を見て裏を言ってからめくる(めくって読むだけにしない)
  • 問題集は、解説を先に読まず、まず自分で解いてみる
  • 授業や講義のあと、帰り道に「今日習ったことを 3 つ」頭の中で言ってみる
  • 友だちや家族に、覚えたことを説明してみる

大事なのは、答えが見えない状態で、自分から引っぱり出す時間をつくることです。

注意しておきたいこと

研究の効果は、たくさんの人の平均で見たものです。効果の大きさは、問題の形式や、どんな人が学んだかによって変わります(Adesope ほか, 2017)。条件によっては、読み直しのほうが成績のよかった研究もあります(Higham ほか, 2023)。また、覚えた内容を別の形で問われる「応用」の場面では、効果は条件によって変わり、同じ形で問われるときほど安定していません(Pan & Rickard, 2018)。

思い出す練習をすれば必ず覚えられる、というものではありませんし、人によって合うやり方もちがいます。読み直しを全部やめる必要もありません。ただ、勉強の時間の一部を「思い出す時間」に置きかえてみる価値は十分にあると思います。

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参考文献

  • Adesope, O. O., Trevisan, D. A., & Sundararajan, N.(2017)Rethinking the Use of Tests: A Meta-Analysis of Practice Testing. Review of Educational Research. https://doi.org/10.3102/0034654316689306
  • Carpenter, S. K., & DeLosh, E. L.(2006)Impoverished cue support enhances subsequent retention: Support for the elaborative retrieval explanation of the testing effect. Memory & Cognition. https://doi.org/10.3758/bf03193405
  • Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T.(2013)Improving Students' Learning With Effective Learning Techniques. Psychological Science in the Public Interest. https://doi.org/10.1177/1529100612453266
  • Higham, P. A., Fastrich, G. M., Potts, R., Murayama, K., Pickering, J. S., & Hadwin, J. A.(2023)Spaced Retrieval Practice: Can Restudying Trump Retrieval? Educational Psychology Review. https://doi.org/10.1007/s10648-023-09809-2
  • Karpicke, J. D., & Roediger, H. L.(2008)The Critical Importance of Retrieval for Learning. Science. https://doi.org/10.1126/science.1152408
  • Kornell, N., Klein, P. J., & Rawson, K. A.(2015)Retrieval attempts enhance learning, but retrieval success (versus failure) does not matter. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition. https://doi.org/10.1037/a0037850
  • Pan, S. C., & Rickard, T. C.(2018)Transfer of test-enhanced learning: Meta-analytic review and synthesis. Psychological Bulletin. https://doi.org/10.1037/bul0000151
  • Roediger, H. L., & Karpicke, J. D.(2006)Test-Enhanced Learning. Psychological Science. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2006.01693.x
  • Rowland, C. A.(2014)The effect of testing versus restudy on retention: A meta-analytic review of the testing effect. Psychological Bulletin. https://doi.org/10.1037/a0037559
  • Yang, C., Luo, L., Vadillo, M. A., Yu, R., & Shanks, D. R.(2021)Testing (quizzing) boosts classroom learning: A systematic and meta-analytic review. Psychological Bulletin. https://doi.org/10.1037/bul0000309