ITパスポートは、ITを使って働くすべての人に向けた国家試験です。出題の範囲は、パソコンやネットワークの仕組みだけではありません。会社のお金の流れ、法律、プロジェクトの進め方まで広く出ます。この記事では、試験の形をたしかめたうえで、分野ごとの進め方と、覚えにくい用語の整理のしかたを紹介します。

試験の形をまず知っておく

ITパスポート試験は IPA(情報処理推進機構)が実施しています。会場のパソコンで解く CBT 方式で、すべての都道府県で毎月行われていて、日時と会場を自分で選んで申し込めます。

  • 問題数と時間:100問を120分で解きます。すべて四肢択一です
  • 出題の分野:ストラテジ系(経営全般)35問程度、マネジメント系(IT管理)20問程度、テクノロジ系(IT技術)45問程度
  • 合格の基準:1,000点満点で、総合評価点が600点以上、さらにストラテジ系・マネジメント系・テクノロジ系の分野別評価点がそれぞれ300点以上

ここで大事なのは、総合点だけでなく分野ごとにも基準があることです。得意なテクノロジ系で点を稼いでも、ストラテジ系が300点に届かなければ合格になりません。「苦手な分野は捨てる」という作戦は取りにくい試験だと考えておいてください。

なお、100問のうち評価に使われるのは92問で、残りの8問は今後の問題を評価するためのものです。採点は IRT(項目応答理論)という方式なので、「何問正解すれば何点」と単純には決まりません。

制度は変わることがあるので、受ける前に ITパスポート試験の公式サイト で最新の情報を確かめてください。

分野ごとの進め方

テクノロジ系は、計算問題に手を動かして慣れる

問題数がいちばん多い分野です。2進数の計算、ネットワーク、データベース、セキュリティなどが出ます。2進数や稼働率の計算は、解説を読んで分かった気になっても、本番で手が止まりがちです。紙に書いて1問ずつ自分で解くところまでやりましょう。

ストラテジ系は、言葉の意味を自分の言葉で言えるようにする

経営戦略、会計、法律などが出ます。ニュースで聞いたことのある言葉が多いぶん、「なんとなく知っている」で止まりやすい分野です。用語を見たら、その意味を一言で言えるかどうかを確かめてください。言えなかったものが、覚えるべき用語です。

マネジメント系は、場面を思い浮かべる

プロジェクトの管理、ITサービスの運用、システム監査などが出ます。働いた経験がある人は、自分の職場の場面に当てはめると覚えやすくなります。経験がない人は、「納期が遅れそうなとき、誰が何をするか」のように具体的な場面を想像しながら読むと頭に残ります。

似た用語は、違いの一点で覚える

ITパスポートでは、似た用語のどちらが正しいかを選ばせる問題がよく出ます。違いを一点にしぼって覚えるのがコツです。

  • 著作権と特許権:著作権は作品を作った時点で生まれ、届け出はいりません。特許権は出願して登録されてはじめて生まれます
  • SWOT分析とPPM:SWOT分析は、自社の強み・弱み(内部)と、機会・脅威(外部)を整理する方法です。PPMは、市場の成長率と自社のシェアの2つの軸で、事業を「花形」「金のなる木」「問題児」「負け犬」に分けます
  • RAMとROM:RAMは電源を切ると中身が消えるメモリ、ROMは電源を切っても消えないメモリです
  • 機密性・完全性・可用性:機密性は「見てよい人だけが見られる」、完全性は「中身が正しく、勝手に書き換えられていない」、可用性は「使いたいときに使える」です

英字の略語は、元の英語もいっしょに覚えると区別しやすくなります。たとえば SLA は Service Level Agreement(サービスの品質についての合意)、RPA は Robotic Process Automation(定型作業をソフトウェアで自動化すること)です。

こうした用語をまとめて見直したいときは、ITパスポートの用語集 が使えます。分野ごとに用語と解説を並べてあるので、試験前の見直しにも向いています。

記憶の研究から分かっている3つのコツ

1つ目は、読み直すより思い出す練習をすることです。テキストを読み返すより、テストのように自分で思い出す方が長く記憶に残ることが、実験で確かめられています(Roediger & Karpicke, 2006)。用語の説明を見て、用語名を何も見ずに言ってみる。これだけでも立派な練習になります。

2つ目は、間をあけて復習することです。数多くの勉強法を比べた総合的な評価では、「練習テスト」と「間をあけた学習」の2つが特に効果が高いとされています(Dunlosky ほか, 2013)。1日でまとめて覚えるより、翌日、数日後、1週間後と間をあけてもう一度解く方が残ります。

3つ目は、間違えたらすぐに解説を見ることです。間違えた直後に正しい答えを確かめると、誤りが直りやすくなります。自信を持って間違えた問題ほど直りやすいことも分かっています(Butterfield & Metcalfe, 2001)。「絶対これだ」と思って外した問題は、覚え直す絶好の機会です。

試験日までの計画の立て方

ITパスポートは毎月受けられるので、まず受験日を決めてしまうのがおすすめです。日付が決まると、そこから逆算して計画が立てられます。

  1. 前半:テキストや問題集で、3つの分野をひととおり見ます。この段階では完璧を目指さず、全体の地図をつかむことを優先します
  2. 中盤:問題を解いて、間違えた用語や解けなかった計算を書き出します。次の日と数日後に、そのリストだけをもう一度解きます
  3. 後半:120分で100問を解く練習をして、時間配分をつかみます。分野別の基準があるので、点の低い分野がないかも確かめます

毎日少しずつ進めて、翌日にその復習から始める流れにすると、間をあけた復習が自然に組み込めます。眠りをはさんで学び直すと、少ない練習で長く覚えていられたという研究もあります(Mazza ほか, 2016)。

用語集と、練習に使えるアプリ

用語の確認には ITパスポートの用語集 を使ってみてください。

梅工房の STUDY TYPE は、答えをタイピング(スマホはフリック)して思い出す練習ができる学習アプリで、ITパスポートの問題集も入っています。

参考文献