英単語を覚えるとき、多くの人は「apple = りんご」のように日本語訳とセットで覚えてきたと思います。それに対して、英語の説明を読んで(聞いて)単語を覚えるやり方を、ここでは「英英」と呼びます。たとえば apple なら「a round fruit with red or green skin」のような説明から覚える方法です。
英英は「上級者向け」「難しそう」と思われがちですが、やり方を少し工夫すると中学生くらいの語彙からでも取り入れられます。この記事では、日本語訳だけで覚える場合との違い、研究でわかっていること、続けやすいやり方をまとめます。
日本語訳だけで覚えると何が起きるか
日本語訳で覚えるやり方は、速くてわかりやすいのが長所です。単語帳を見て 1 秒で意味がわかるのは、間違いなく便利です。
困るのは、英語の単語と日本語の単語が、意味の範囲までぴったり重なっているとは限らないことです。たとえば borrow と lend はどちらも「貸し借り」の話ですが、向きが逆です。日本語訳だけで覚えていると、どちらがどちらか混ざりやすくなります。英英の説明なら、borrow は「to take something from someone and give it back later」のように、誰から誰へ動くのかまで書いてあるので、使い方ごと頭に入ります。
もうひとつは、聞いたり読んだりしているときに、頭の中でいちいち日本語に置きかえる癖がつきやすいことです。会話の速さについていけないと感じる人は、この置きかえに時間を取られていることがあります。
英英で覚えると何がいいのか
英語の説明を読むと、ひとつの単語を覚えるあいだに、説明に使われているやさしい単語も何度も目にします。thing、someone、used to、kind of といった基本の言い回しは、説明文の中にくり返し出てきます。単語を覚えながら、説明するための英語にも慣れていけるのが英英のよいところです。
また、知らない単語に出会ったときに「英語で言いかえるとどうなるか」を考える習慣がつきます。会話で単語が出てこないときに、別の言い方で切り抜ける力にもつながっていきます。
研究ではどう言われているか
ただし、英英だけが正解というわけではありません。イスラエルの研究で、高校生と大学生 123 人に、なじみのない単語 15 語を、英英辞書の説明、英和にあたる訳だけの辞書、英語の説明に訳を添えた辞書(「バイリンガライズド辞書」と呼ばれます)の 3 種類で調べてもらい、意味の理解と、その単語を使って文を作る力を比べた実験があります。結果は、学習者の辞書を使う力によって向いている辞書が違う、というものでした。とくに力のある学習者では、英語の説明に訳を添えた辞書が、英英だけの辞書より成績がよかったと報告されています(Laufer & Hadar, 1997)。
この結果からは、「英語の説明」と「日本語の訳」は対立するものではなく、組み合わせると強いと考えるのが自然です。最初は英語の説明を読み、わからなければ訳で確かめる、という順番がおすすめです。
もうひとつ、覚え方そのものについては、はっきりした研究があります。外国語の単語を覚える実験で、一度正しく答えられた単語をもう一度「読み直す」のと、もう一度「テストして思い出す」のを比べたところ、読み直しは 1 週間後の成績にほとんど効かず、思い出す練習をくり返したほうが大きく伸びました。しかも学生たち自身は、どちらが効くかをうまく予想できていませんでした(Karpicke & Roediger, 2008)。英英でも日本語訳でも、「眺める」より「思い出す」が大事だということです。
やり方のコツ
学習者向けの英英辞書を使う
英語を話す人向けの辞書は、説明に難しい単語がたくさん出てきます。英語を学ぶ人向けの辞書(learner's dictionary)は、説明に使う単語の数をしぼって書かれているので、まずはそちらを使ってください。
説明を自分の言葉で言いなおす
説明を読んだら、紙に写すより、声に出して短く言いなおしてみてください。「borrow は、あとで返す約束で人から何かをもらうこと」と日本語で言ってもかまいませんし、英語で言えたらさらによい練習になります。
例文をひとつだけ選ぶ
辞書の例文を全部読む必要はありません。自分が使いそうな場面に近いものをひとつ選び、それごと覚えます。単語だけより、文の形のほうが思い出すきっかけが増えます。
似た単語と並べる
borrow と lend、say と tell のように、混ざりやすい単語は説明を並べて読むと違いがはっきりします。英英の説明は、こうした比べ方と相性がよいです。
聞いて答える練習
英英の練習でとくにおすすめなのが、説明を「聞いて」単語を答えるやり方です。読むときは何度でも戻れますが、耳で聞くと一度で意味をつかまなければなりません。英語を英語のまま理解する練習として、ちょうどよい負荷になります。
ひとりでやるなら、次のような手順がやりやすいです。
- 覚えたい単語の英英の説明を、辞書アプリの読み上げなどで流します
- 説明が終わる前に、何の単語かを声に出して答えます
- 答えられなかった単語には印をつけ、翌日以降にもう一度出します
ポイントは、答えを見る前に一度自分で思い出そうとすることです。上で紹介した研究のとおり、思い出す回数を増やすほうが、読む回数を増やすより記憶に残りやすいと考えられています。間違えた単語を日をあけてくり返すのも、続けるうえで大事です。
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梅工房の 勉強ダンジョンズ は、英語の説明を録音した英語の声で聞いて、正しい単語を早押しで選んで進むダンジョン RPG です。打って答えたい人は、STUDY TYPE の英英の問題集で、説明から単語をタイピングする練習もできます。
参考文献
- Laufer B, Hadar L(1997)Assessing the effectiveness of monolingual, bilingual, and "bilingualised" dictionaries in the comprehension and production of new words. The Modern Language Journal. https://doi.org/10.1111/j.1540-4781.1997.tb01174.x
- Karpicke JD, Roediger HL(2008)The critical importance of retrieval for learning. Science. https://doi.org/10.1126/science.1152408